初めまして
スタッフブログ私は浅香法律事務所で強制執行や供託などを担当している事務の竹内といいます。
強制執行といいましても、
一体どういったものか実態が分からない方が多いかと思われますので、
先日東京の下町で、3階建の建物の強制執行(「断行」)を行った時のことを
書きたいと思います。
この時の強制執行は、緊迫した強制執行となりました。
賃料を1年近く滞納した賃借人は、裁判で明渡し(立退き)の判決を受けましたが、
出ていく気配は全くありません。
その後、強制執行の手続により、賃借人は、裁判所執行官の「催告」を受けましたが、
それでも賃借人は建物を明け渡そうとはしませんでした。
催告というのは、断行(実力による排除)に至る前に、一度賃借人の住む建物に赴き、
断行期日を賃借人に知らせ退去を促します。
しかしながら、賃借人はこの期日までに明け渡さなかったため、
やむを得ず執行官の補助者が人夫20人以上を用意して、
建物の明渡しを断行することとなりました。
断行当日、執行官、執行補助者と私は、明渡しを命ぜられた賃借人の住む建物に赴きました。
まず屋内に入る前、執行官は必ず、屋内に賃借人がいるかどうかドアの前で確認をします。
例えばインターホンを押したり、「いらっしゃいますか。」と呼びかけたりします。
賃借人が在宅している場合は、賃借人自身がドアの鍵を解錠して開けてくれるものですが、
全く反応がない場合や不在の時には、
執行官の指示で同行した「鍵屋」さんが鍵を解錠して中に入るわけです。
この時も、何度か呼びかけましたが、中からは一向に応答はありませんでした。
そこで私達は、鍵を開けて屋内に入りました。
屋内に入っても人の姿や物音はありませんでした。
私達は、3階建の建物の部屋一つ一つを見て回りましたが、
結局、賃借人本人とその家族は不在でした。
唯一、飼い犬の大型犬が建物内に取り残されていました。
暫くして、執行官の「着手」という断行開始の合図とともに、
人夫さん達20人が一斉に建物に入り、梱包作業を始めます。
執行官の合図がないことには、無闇にものに触れたりいじったりしてはいけません。
ただ、大型犬がいたので作業員に危害を加える恐れもあり、
専門業者に依頼し犬は外に連れ出されました。
そうして断行は着手されたのですが、開始後間もなく、
突如、どこからともなく賃借人が私達のいる2階に現れました。
私達は部屋一つ一つを見て回りましたが、賃借人の気配はありませんでした。
どうやらひっそりと身を隠していたようなのです。おそらく屋上にある大きな犬小屋でしょう。
賃借人はとても興奮した様子で「1日待ってくれれば自分で出る!」などと、
怒鳴って明渡しを拒みましたが、執行官は事情を説明し、
賃借人をなだめると、断行は通常どおり続けられました。
その後、人夫さん達が1階から3階までの荷物を段ボールに詰めて
トラックで保管場所まで運び出すという作業を繰り返しました。
人夫さん達は手慣れていて作業は大変早いのですが、
それでも断行完了までに3時間以上を要しました。
賃料を払えない方にもいろいろな事情があるのでしょうが、
裁判を出された時点で話し合いをし、ある程度の期限の猶予を賃貸人から受けて、
任意に引っ越しをするのがなによりだと思います。