判例紹介② タレントも大変です。

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今回は、タレントとその所属する芸能事務所との信頼関係が破壊されたとして、タレントからの契約解除の効力を認めた事例についてご紹介します。(名前は仮名を使用します。) 【事案の概要】 タレントの大倉さんは、芸能事務所の上田プロとの間で専属契約を結び、芸能活動を行っていました。 大倉さんが10年近く上田プロの下で芸能活動を行っていたところ、上田プロの経営者である上田さんが脱税事件により有罪判決を受けました。 大倉さんは、それまでにも、自身の本名と同一の芸名を勝手に焼肉チェーン店の名称に使われたこと、許可なく水着姿を裸エプロンのように加工され写真集を出版されたこと、クライアントの意向だと嘘をつかれ結婚を不当に認めてもらえなかったことなどの事実があったので、今後上田プロの下で芸能活動を続けることに不安を感じました。 そこで、大倉さんは上田プロとの信頼関係が破壊されたとして、専属契約を解除する旨通告し、それ以降は、出演予定であった番組の出演を拒絶するなどしました。 それに怒った上田プロは、大倉さんのこれらの行為は専属契約に違反するものだと主張して、損害金1億円の支払いを求め訴訟を起こしました。 【一審判決】大倉さんが完全勝訴し、上田プロの請求は全部棄却されました。 これに対し負けた上田プロが控訴しました。 【二審判決】裁判所は、上田プロの控訴を棄却しました。 本件の争点は、上田プロと大倉さんの間の専属契約の解除が有効か否かについてです。 裁判例の中では、芸能事務所とタレントとの契約関係は、当事者間の信頼関係を基礎とし、その信頼関係が破壊されれば、契約の解除原因となるとされています。 裁判所は、上田プロの脱税事件が、看板タレントであった大倉さんのこれまで積み上げてきたイメージを壊しかねず、さらに上田プロがこれまで大倉さんに対して行った行為等を考慮すると、大倉さんが上田プロに不信感を募らせ、これ以上仕事を続けることができないと考えたのは当然のことと判断しました。 よって、裁判所は、両者間の信頼関係は破壊されたので、解除は有効であるとし、上田プロの請求を棄却しました。大倉さんの勝訴です。             (東京高裁 平成29年1月25日 判決より)