判例紹介①

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今回は、会社の指定するテレビ付社宅に入居した社員が、支払ったNHK受信料についてNHKに返還を求めた事件について、ご紹介します。(名前は仮名を使用します。) 【事案の概要】 山田さんは、不動産会社日本建物が賃貸する家具家電付き賃貸物件(本件物件)に入居し、NHKとの間で放送の受信契約(本件受信契約)を締結して受信料を支払いました。 しかし山田さんは、勤務先会社川上電機の指定する、日本建物の提供した部屋に一時的に入居したに過ぎず、放送法64条1項にいう、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」(放送受信契約締結義務者)に当たらないとして、NHKに対して、1ヶ月分の受信料及びこれに対する法定利息の支払いを請求しました。 【一審判決】山田さんの請求について、山田さんが勝訴し、裁判所は、NHKが受信料を山田さんに返すことを命じましたが、法定利息までは認めませんでした。 これに対し負けたNHKが控訴しました。 【二審判決】東京高裁は、NHK敗訴部分を取り消し、山田さんの請求を棄却しました。(逆転判決) 裁判所は、争点の「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者」の定義について、受信設備を物理的に設置した者だけでなく、その者から権利の譲渡を受ける等して、受信設備を占有使用して放送を受信することができる状態にある者も含まれると解しました。 本件物件の唯一の居住者であった山田さんは、日本建物によって設置されたテレビ付き本件物件を、日本建物から借りた川上電機の指定を受けて、これを占有使用して放送を受信し得る状況を享受する者であるので、「協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者(放送法64条1項)」に該当します。 したがって、一時的に入居した山田さんでも、放送受信契約の締結義務を負い、本件受信契約に基づき支払った受信料は、法律上の原因があるとして、山田さんの請求は棄却されました。               (東京高裁 平成29年5月31日 判決より)