転貸物件の明渡し(占有移転禁止の仮処分)その2

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前回に引き続き、今回は、『占有移転禁止の仮処分』の実例をご紹介します。 大きな倉庫の持主であるAさんは、車修理屋のBさんとの間で賃貸借契約を結び、この倉庫を賃貸していました。 Bさんが賃料を支払わなくなったため、Aさんは、Bさんに対し、貸倉庫の明渡請求訴訟を提起することとしました。 ところが、Bさんはこの貸倉庫を入れ墨屋のCさんに無断転貸し、同じ倉庫内でCさんが入れ墨のお店を営業しているという情報が入りました。 そこで、Aさんは裁判に先立って、BさんとCさんに対して、『占有移転禁止の仮処分』の申立を行うこととしました。 Aさんは、「BとCは本物件に対する占有を他人に移転してはならない」という裁判所の仮処分決定を得て、実際に執行官と一緒に倉庫へ行ってみると、Bさんは更に酒屋のDさんにまで無断転貸していることが判明しました。 まず、執行官は、BさんとCさんに対する仮処分の執行を完了させました。 そして直ちに、Aさんは、Dさんに対しても同じ仮処分を行い、再度執行官と倉庫に赴き、Dさんに対する執行も完了させました。 あとは、建物明渡の訴訟をB、C、Dさん全てに提起し、その勝訴判決をもとに、全員から倉庫を明け渡すことに成功しました。 もし、このような仮処分をしなければ、この倉庫は、D→E→Fとどこまでも次々と又貸しされてしまうのです。 この事件は、通常の明渡事件より倍くらいの時間がかかりましたが、事前に『占有移転禁止の仮処分』を行ったことで、Dさんのところで又貸しが止まり、実際の明渡執行は、スムーズに執り行うことができました。